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お知らせ2021年01月14日

臨床研究におけるデータ公開(オプトアウト)/エキソソームが難治性脳神経免疫疾患・変性疾患の病態および疾患進行に与える影響の解明

研究課題名
「エキソソームが難治性脳神経免疫疾患・変性疾患の病態および疾患進行に与える影響の解明」
 
研究の対象
この研究では、炎症性脱髄疾患(多発性硬化症、視神経脊髄炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、その他の炎症性脱髄疾患)と診断され、かつ同意の得られた患者さんを対象としています。福岡中央病院脳神経センター及び九州大学脳神経内科において、多発性硬化症、視神経脊髄炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、その他の脱髄疾患や脳神経疾患と診断された患者さんおよび健常者で、20歳以上の方に本研究へのご協力をお願いしています。

 
研究目的・方法
目的
エキソソームはほとんどの細胞から分泌される微小な粒子(大きさが直径 30nm ~ 100nm 程度の膜で囲まれた粒子)です。エキソソームの中には、様々な物質が含まれていて、離れた細胞に情報を伝える重要な役割を担っています。脳から分泌されたエキソソームは、血液の流れにのって遠く離れたところにいるリンパ球などの免疫細胞に作用して炎症をひどくしたり軽くしたりできると考えられています。炎症性脱髄性疾患では、髄鞘を作る細胞(オリゴデンドログリアやシュワン細胞)や神経細胞や髄鞘にエネルギーを供給している細胞(アストログリアなど)から分泌されるエキソソームが、炎症を持続させたり、再発を起こしたりするうえで重要な役割を果たしていると推測されていますが、詳しいことはわかっていません。コネキシンと呼ばれる膜を貫通する蛋白質は細胞同士をつないで情報を伝達するチャネルを作りますが、上記のオリゴデンドログリアやアストログリア、シュワン細胞でも作られていて、それらの細胞が分泌するエキソソームにも含まれています。私たちは、多発性硬化症の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎を起こしたマウスの末梢血から精製したエキソソームにもコネキシンが含まれていて、コネキシンを発現したエキソソームの量がEAEの重症度によって変動することをみつけました。しかし、実際の炎症性脱髄疾患の患者さんでも同様かはまだわかっていません。そこで私たちは、炎症性脱髄疾患の患者さんの血液からエキソソームを取り出して詳しく調べて、病気の重さや血液や髄液での炎症の強さ、および抗神経抗体との関連を検討して、エキソソームの役割を明らかにしたいと考えています。この研究により、エキソソームが炎症性脱髄疾患で果たしている役割が明らかになれば、新たな診断法や治療法の開発に役立つと考えています。本研究は国際医療福祉大学大川キャンパス倫理審査委員会の審査を受け、福岡中央病院長の許可の下、行われています。この研究を行う期間は、令和5年3月31日までです。

研究方法
この研究への参加に同意いただきますと、問診や臨床記録(カルテ)から得られる範囲内で臨床情報を取得します。また、通常の採血に加えて約10 mLの追加の採血をさせていただきます。
 
研究に用いる資料・情報の種類
取得する情報
年齢、性別、臨床診断名、血清・髄液採取年月日、発症年月日、既往歴、臨床症状、臨床所見、嚥下機能評価、治療の有無および反応性、臨床経過、血液検査結果(白血球数、白血球分画、CRP値、血沈、蛋白、アルブミン、M蛋白の有無・種類、免疫グロブリン値、補体、抗核抗体、抗SS-A/SS-B抗体、抗ds-DNA抗体、抗アクアポリン4抗体、抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白抗体、抗甲状腺抗体、自己抗体、甲状腺ホルモン、ビタミンB1、ビタミンB12、葉酸)、髄液検査所見(細胞数、蛋白量、オリゴクローナルバンド、ミエリン塩基性蛋白量、アルブミン値、免疫グロブリン値)、電気生理学検査所見(末梢神経伝導検査、運動誘発電位検査、体性感覚誘発電位検査、視覚誘発電位検査、電流知覚閾値検査、瞬目反射検査、針筋電図)、画像検査所見(頭部MRI検査、全脊髄MRI検査、頭部SPECT検査)などです。 なお、この研究は、国際医療福祉大学薬学部、福岡中央病院脳神経センター、高木病院、九州大学神経内科、Basel大学の共同研究となります。血液は、採取した医療機関で遠心分離され、血清の状態で国際医療福祉大学福岡薬学部へ送られます。国際医療福祉大学福岡薬学部で血清からエキソソームを抽出し、フローサイメトリーによる表面発現分子の解析、エキソソームのマイクロRNA解析、超高感度デジタルELISA(SIMOA)法による含有物質の測定、および抗神経抗体の探索と測定を行います(測定の一部はフナコシ株式会社 Funakoshi Co. Ltd.へ委託)。また、一部はBasel大学へ郵送してSIMOA法による解析を行います。取得したデータ・情報・試料は、国際医療福祉大学および参加各施設で匿名化された後、安全に保管されます。これらの検査によって得られたデータ・情報(診療情報など)を、エキソソームの解析結果と比較し関係性を調べます。
 
外部への資料・情報の提供
なし
 
研究の体制 ・研究事務局
  • 研究責任者
    国際医療福祉大学福岡薬学部 教授 吉良潤一
  • 研究分担者
    国際医療福祉大学福岡薬学部 講師 今村友裕
    国際医療福祉大学トランスレーショナルニューロサイエンスセンター 特任助教 グザリアイ・ママティジャン
  • 共同研究者
    福岡中央病院脳神経センター脳神経内科 部長 中村優理
    九州大学大学院医学研究院神経内科学 准教授 山崎亮
    九州大学病院脳神経内科 助教 緒方英紀
    九州大学病院脳神経内科 助教 渡邉充
    Neurology Departments of Medicine, Biomedicine and Clinical Research, University Hospital Basel, University of Basel, Switzerland. /Vice Head Outpatient Clinic and MS Centre Dr.Jens Kuhle
  • 当院研究責任者
    福岡中央病院脳神経センター脳神経内科 中村優理
    電話:092-741-0300
    FAX:092-781-2563
    住所:福岡県福岡市中央区薬院二丁目6番11号
    メールアドレス:nakayuri@kouhoukai.or.jp
お問い合わせ先
この研究のことで何か分からないことや心配なことがありましたら、いつでもここに記載されている医師にお尋ねください。
  • 研究責任者
    国際医療福祉大学福岡薬学部 教授 吉良潤一
  • 研究分担者(実務担当者)
    国際医療福祉大学福岡薬学部 講師 今村友裕
  • 連絡先
    電話:0944-92-2000
    メールアドレス:imamura_tomohiro@iuhw.ac.jp