医療法人社団 高邦会 福岡中央病院

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外科

胆石症

胆のうや胆管に結石がある状態のことをいいます。胆のうは肝臓で作られた胆汁を一時的に貯留します。胃に食物が入ると収縮し、胆汁を胆のうから総胆管、十二指腸に運び出す役目をしています。胆のうにできる石を胆のう結石、胆管にできる石を胆管結石と呼び、胆汁をためる機能がある胆のうに結石ができやすくなっています。結石によって胆汁の流れが悪くなったり、胆のう管や胆管が閉塞すると、容易に細菌感染が起こり、胆嚢炎や胆管炎が生じます。

症状は

嘔気を伴う強い上腹部痛や右上腹部の圧迫感を感じます。急性胆のう炎は、腹痛で来院された方の約1割を占めるともいわれ、比較的多い病気です。胆のう炎がひどくなると腹膜炎を起こしたり、総胆管に落下した結石が原因で急性すい炎になりますので注意が必要です。胆管結石は、胆のう結石より強い痛みになることが多く、胆汁の流れが悪くなり黄疸や肝臓障害がでることもあります。

治療は

軽症の急性胆のう炎は、絶食・抗生剤投与によって改善する場合がありますが、炎症が強い場合緊急手術や胆のうに溜まった膿を体外に出すチューブを腹壁から挿入すること(経皮経肝胆のうドレナージ)があります。また、軽症であっても一度胆のう炎になるとその2割程度が急性胆のう炎を繰り返すといわれており、原則は症状のない時に胆のう摘出術を行い、胆のうを取ってしまいます。
胆管炎の場合は、口から内視鏡を挿入し、特殊な器具を胆管に挿入し石をかきだしたりします。胆のうに結石があれば、後日胆のうを摘出します。

腹腔鏡下胆のう摘出術とは

お腹に3~4カ所の小さな穴を開けて炭酸ガスをお腹の中に入れて膨らませた後、腹腔鏡(カメラ)を挿入し、お腹の中を観察しながら胆のうを取りだします。
手術の所要時間は約60分です。

よくあるご質問

Q.どのくらいの期間入院が必要ですか?

A.待機的に治療される場合は必要な検査をすべて外来で行い、手術前日入院が一般的です。順調に経過した場合、腹腔鏡下手術→術後3日程度で退院とする4-5泊程度での入院治療になります。仕事復帰は、退院して自宅で3-7日程度過ごされたのち、仕事復帰するのがよいと思います。
炎症が高度な場合や他疾患を合併している方は入院期間が延長する場合があります。

Q.胆のうは取っても大丈夫なのでしょうか?

A.胆のうは胆汁を貯蔵する臓器です。胆汁は肝臓で作られ、消化酵素を含みます。胆のうがなくなったから、胆汁が出なくなることはありませんが、脂っこいものをたくさん食べたあと、消化不良になって下痢することはあります。脂っこいものをたくさん取る方は、注意が必要になります。

急性虫垂炎

いわゆる盲腸のことです。虫垂は盲端になった細い管の形状をしていますが、細菌が感染し、炎症を生じた状態です。

症状は

虫垂は右下腹部にあるので、必ず右下腹部痛があると思われがちですが、初期の段階では、みぞおちの辺り(心窩部)やおへその周りがぼんやりと痛み、虫垂炎が進行すると痛みが右の下腹部に移り、痛む場所がはっきりとしてきます。腹痛のほかに、発熱・嘔吐(おうと)が急性虫垂炎によく現れる症状です。右下腹部やおへそ周りの腹痛が、治らない場合は(消化器)内科・外科を受診してください。

治療は

現在抗生剤の進歩により、急性虫垂炎は多くの絶食・抗生剤投与によって改善します。炎症が進行し腹膜炎になっている場合は、一般に緊急手術が必要です。手術は炎症を生じている虫垂のみを切除する虫垂切除術を行いますが、さらに炎症が広がっている場合は、大腸の一部まで切除すること(回盲部切除)があります。
抗生剤で一旦よくなっても、繰り返すことが多いため、炎症がおさまった時に待機的虫垂切除することを勧める場合もあります。

よくあるご質問

Q.なぜ急性虫垂炎は盲腸といわれるの?

A.医学的には盲腸は病気の名前ではなく、大腸の場所の名前です。昔は診断技術が発達していなかったので急性虫垂炎は遅れて発見されることが多かったようです。このため虫垂炎の炎症がつながっている盲腸まで広がっていることは珍しくなかったようです。このために急性虫垂炎は盲腸炎と呼ばれていたという経緯があるようです。

Q.どのくらいの入院期間と術後療養が必要ですか?

A.一般的な虫垂だけの切除で術後順調に経過した場合は、術後5~7日の入院、退院後3日前後の療養が必要です。炎症が高度な場合や他疾患を合併している方は入院期間を延長する場合があります。

Q.最初から切除するのと抗生剤治療を受けるのはどちらがよいですか?

A.手術は術後の疼痛や合併症のリスクがあります。一般的な虫垂だけの切除で術後順調に経過した場合は、1週間程度の入院、社会復帰までは術後10日前後です。一方、抗生剤で治療した場合は手術に関わる痛みなどの問題はありませんが、2~3週間程度の入院が必要になります。抗生剤の効果がない場合は、途中で手術する方針に変更する場合があります。どちらの治療をするか、炎症の程度と本人の希望などを考慮し決定します。一概にどちらがよいとはいえません。

Q.手術を受けた場合、入院費はいくら必要ですか?

A.7日間入院し、国民健康保険で3割負担の場合、支払総額は約10万円です。

鼡径ヘルニア

いわゆる脱腸のことです。臓器や組織が本来あるべき場所から脱出した状態のことをヘルニアと言います。鼡径ヘルニア(そけいヘルニア)は、足の付け根から恥骨にかけての鼡径(そけい)部の筋膜が破れ、腸などの内臓の一部が外に飛び出してきたものです。子供のヘルニアは先天的なものですが、成人の場合は加齢によって筋膜が弱くなることが主な原因です。

症状は

立ったときやおなかに力を入れたときに、鼡径部にポッコリとして軟らかく膨れます。

治療は

ヘルニアは自然に治ることはありません。有効な薬物療法もないので、根治のためには手術が必要です。痛みや張りが強い、ヘルニアが出たまま押しても戻らないというような場合は手術になります。手術の内容は、筋膜の隙間をポリプロピレン製のメッシュのシートで塞ぐ手術が主体となっています。アプローチの仕方として、前方から鼡径部の皮膚を切開し筋膜に到達する方法と腹腔鏡で筋膜に到達する方法があります。
軽い痛みや違和感だけが発生する鼡径ヘルニアの場合、すぐに手術をする必要はありません。しかし、鼡径部の膨らみに加え、強い痛みや嘔吐などの症状がある場合、腸がヘルニア門に挟まれ、もとの状態に戻れなくなる「嵌頓」という状態に陥っている可能性もあります。嵌頓は腸閉塞*などの病気を起こし、腸が壊死するなど生命に関わる危険性があります。そのため、早急な対処が必要です。

よくあるご質問

Q.手術以外の方法でヘルニアは治りますか?

A.年齢に伴う変化なので体を鍛える訓練などで良くなることはありません。
根治するには手術しかありません。手術以外の方法として、表面から膨らみを抑える方法としてヘルニアバンドやヘルニアサポーターがあります。腫れた場所にうまく固定しないと効果がなく、歩行などによって抑えたところがずれることが欠点です。

Q.どのくらいの入院期間と術後療養が必要ですか?

A.術後順調に経過した場合は、術後3~4日の入院が一般的です。術翌日から歩行はできますが、退院後3日前後の療養が望ましいと思われます。

Q.手術後いつから運動してもいいですか?

A.ゴルフやジョギングなどの激しい運動や筋力トレーニングは、だいたい術後4週間後くらいから身体の調子に合わせて始めてください。

胃がん

胃がんは日本ではがんの中でも多い疾患です。この疾患の撲滅をするために日本胃癌学会から治療ガイドラインが出されています(日本胃癌学会ホームページ)。このガイドラインは、病気の進み具合に応じた標準的な治療が示されています。

治療法が決まるまでの流れ

内視鏡、CT、腹部エコーなどを行い腫瘍が胃のどの深さまであるか、リンパ節転移はないのか、肝臓やおなかのほかのところに広がっていないかなどを評価します(腫瘍評価)。呼吸機能検査、心臓検査、併存疾患の病態把握、栄養評価など個々の患者における耐術能(体力)評価を行います。

標準的な治療と実際に行われる治療

腫瘍根治あるいは腫瘍コントロールを目指した標準的な治療と実際に行われる治療が異なることがあります。すべての患者様を多方面から治療前の状態を検討し、受けるべき治療を提案します。例えば、体力に問題なければ実際に行われる治療と標準治療が同じ内容になるでしょう。逆に、体力がなければ手術以外のダメージが少ない治療が提案されます。
病状や治療方針の提案を聞く場合は、相談ができる家族と共に説明をお聞きになるのがよいでしょう。治療方針の説明直後に、治療を即断しなければならないことはありません。大切なことなのでよく検討して返事をすることを勧めます。

当院の治療の特徴

当院ではガイドラインに沿って治療を行っています。内視鏡切除、胃切除(腹腔鏡手術/開腹手術)、化学療法を中心に行っています。糖尿病や心臓疾患などを有する患者様でも、術前からその領域の専門医と連携し、より安全な手術を目指します。合併症が少ない、患者様にとって「負担の少ない治療」を目指しています。
他臓器への転移や浸潤を有する進行している場合にも、抗がん剤・免疫療法などの方法を用いて「諦めない治療」を提案し、実行します。

よくあるご質問

Q.ステージって何ですか?

A.病期とも言い、進み具合を示したものです。がん治療に大きな影響を及ぼす3つの要因は、がんが胃のどの深さまで達しているか、リンパ節転移がどの範囲まで及んでいるか、肝臓やその他の臓器に転移していないかです。この3つの要素を評価し、総合的に判断したのがステージです。IA~IV期まであります。

Q.リンパ節を取る必要はあるのですか?

A.胃のがん細胞は、その場で大きくなり根を下ろすように広がります。胃の壁は5層構造になっていますが、表面から2番目の層からリンパ管が多くなっていきます。がん細胞はリンパ管の壁を壊しリンパ管内に入りリンパ節に流れ込みます。深くなれば、リンパ節転移を起こしやすくなります。

Q.病院によって勧められた治療法が異なります。どうしたらよいでしょうか?

A.病気の進み方や患者様の状態によって治療法は異なってきます。また、患者様が何を一番大事にしているかでも治療法は変わります。病気のこと、患者様自身の状態や希望を十分理解したうえで、最終的な治療法を勧められます。正確な情報がなければ、違った治療法が勧められることがあるかもしれません。すべての検査資料と検査してくれた医師の紹介状をもって、ほかの医師に相談することもよい方法だと思います(セカンドオピニオン)。

Q.手術したあとも病院に通わないといけませんか?

A.手術で摘出した胃とリンパ節を顕微鏡検査で評価してもらいます。最終的にどこまで病気が進んでいたか評価します。この結果、再発しやすいあるいは追加治療の効果があると判断された場合は、一般的に抗がん剤などの追加治療が勧められます。その治療のため、定期的な通院が必要です。また、追加治療を受けなくても、食事を中心にした日常生活での問題を早期に解決するためあるいは再発チェックのため定期的な通院が約5年間必要です。

大腸がん

日本人の2人に1人ががんにかかる時代になりました。大腸がんは女性のがん死亡率の1位、男性のがん死亡率の3位を占めております。大腸がんに対する治療は、粘膜内にとどまるごく早期の状態であれば内視鏡下切除の適応ですが、粘膜下層以深への浸潤が疑われる場合はリンパ節郭清を伴った手術治療が適応となります。

治療法が決まるまでの流れ

内視鏡、CT、腹部エコーなどを行い腫瘍が胃のどの深さまであるか、リンパ節転移はないのか、肝臓やおなかのほかのところに広がっていないかなどを評価します(腫瘍評価)。呼吸機能検査、心臓検査、併存疾患の病態把握、栄養評価など個々の患者における耐術能(体力)評価を行います。

標準的な治療と実際に行われる治療

腫瘍根治あるいは腫瘍コントロールを目指した標準的な治療と実際に行われる治療が異なることがあります。すべての患者様を多方面から治療前の状態を検討し、受けるべき治療を提案します。例えば、体力に問題なければ実際に行われる治療と標準治療が同じ内容になるでしょう。逆に、体力がなければ手術以外のダメージが少ない治療が提案されます。
病状や治療方針の提案を聞く場合は、相談ができる家族と共に説明をお聞きになるのがよいでしょう。治療方針の説明直後に、治療を即断しなければならないことはありません。大切なことなのでよく検討して返事をすることを勧めます。

直腸がんの手術の特徴

直腸がんの手術で皆さんが気にされることのひとつが、「肛門から排泄する機能を温存できるか」と思います。
どの施設でも可能な限り肛門を残す手術が行われていますが、手術をする前とまったく同じ状態の肛門を残せるわけではありません。排便回数が増えるなどの排便機能低下はほぼ避けられません。このほかに排尿機能、性機能などの後遺症が出現することがあります。
手術をして治る患者様が多いのが大腸がんの特徴ですが、適切な治療を受けなければ、せっかく治るがんが治らなかったり、余計な合併症が出てしまったりすることもあります。

当院の治療の特徴

当院ではガイドラインに沿って治療を行っています。内視鏡切除、胃切除(腹腔鏡手術/開腹手術)、化学療法を中心に行っています。糖尿病や心臓疾患などを有する患者様でも、術前からその領域の専門医と連携し、より安全な手術を目指します。合併症が少ない、患者様にとって「負担の少ない治療」を目指しています。
他臓器への転移や浸潤を有する進行している場合にも、抗がん剤・放射線治療などの方法を用いて「諦めない治療」を提案し、実行します。

よくあるご質問

Q.大腸がんの自覚症状にはどんなものがありますか?

A.初期段階で自覚症状はほとんどありません。進行した大腸がんでも、その大きさやガンのできた場所などで症状が変わってきます。つぎのような症状が続けば検査を受けてください。

  • 腹痛、便が細い、残便感、便秘と下痢を繰り返す。
  • 便に血が混ざっている、もしくは血の塊が含まれている。
  • 背中や下腹部、太ももに痛みがある。
  • 腹部にシコリができる。

Q.内視鏡手術と外科手術の違いはなんですか?

A.内視鏡手術は大腸内視鏡で治療する手術で、外科手術は全身麻酔が必要な手術、すなわち開腹手術と腹腔鏡下手術になります。大腸の壁は5層構造になっています。大腸がんは最も内側の粘膜から発生し、粘膜下層→固有筋層→漿膜下層→漿膜に根を下ろすように発育します。粘膜下層に浸潤し、リンパ節転移の頻度が高い大腸がんは外科手術の対象になります。

Q.手術後は排便の状況がかわりますか?

A.人工肛門を作らない手術でも、腸の長さが短くなります。排便回数が増えるたり、逆に便秘傾向になるなどの排便機能低下がみられます。

Q.大腸癌手術後の検査で、CEAが高いので検査をするといわれました。どのような意味なのでしょうか?

A.CEA(癌胎児性抗原)はがんで多く作られることより腫瘍マーカーと呼ばれます。採血検査でわかることより、術後は定期的に測定します。CEAが高くなると再発を疑ってCTや内視鏡検査などの追加検査を行います。CEAが高いからといっても必ず再発しているとはいえません。煙草を吸う方や糖尿病、肝臓病の方は、癌の再発がなくてもCEAが上がることがあります。しかし、正常値から異常値に変わった場合は、万一のことを考え詳しい検査を受けてください。

手術までの流れ

▼ 腫瘍評価
  • CT検査
  • 腹部超音波検査
  • 内視鏡検査、消化管造影検査
▼ 耐術能評価
  • 心電図、心臓超音波検査
  • 呼吸機能検査
  • 胸部エックス線など
▼ その他
  • 併存疾患評価:追加治療の有無チェック
  • 疾病の頻度が多く、同じ領域の疾患の有無チェック
    (例:胃癌の治療の際、大腸の検査を追加で行う)
▼ 入院 手術前日、午前中入院が一般的です
手術
※腫瘍評価と耐術能評価検査の順番は入れ替わることがあります。
手術することが決まれば、来院当日耐術能の検査が行えます。

よくあるご質問

Q.術前何回ぐらい通院が必要ですか?

A.耐術能評価は初めて来院された日にできます。絶食などの処置が必要な検査は後日になる場合があります。手術することが決まれば、平均の通院回数ははじめて来院された日を含めて2回です。来院の回数が少なくなるよう配慮しますが、病態によって異なりますので、スタッフにご確認ください。

Q.手術を受けるかどうか迷っています。1回説明を受けましたが、もう一度説明を聞くことはできますか?

A.病気の説明や治療については患者様・ご家族が納得できるまで何度でも行います。ご家族のみの相談は、原則受け付けていません。患者様とご一緒に来院ください。

Q.入院のとき、何が必要ですか?

A.内服中の薬、お薬手帳、洗面用具(歯磨き、コップ、せっけん、シャンプー、リンス、ひげそりなど)、日用品(はし、ティッシュペーパー、洗濯洗剤、イヤホンなど)、身の回りのもの(タオル・バスタオル各2~3枚、下着、室内履きなど)が必要です。入院申込のとき詳しく説明します。手術を受ける方へも参照してください。わからないことがあれば遠慮なくスタッフにお尋ねください。

Q.手術のとき、家族が控える場所はありますか?

A.病室か談話室で待機していただいています。